新規事業を立ち上げることになったものの【大企業の新規事業がうまくいかない理由】 を知っていれば、早めに対策を打って、新規事業を成功させられるはず ですよね?
大企業で働いていて、新規事業を立ち上げることになったあなたも、大企業の新規事業がうまくいかない理由を知っているだけで、よくある失敗を避け、成功に近づくことができます。
大企業で働いたり、大企業とプロジェクトを進めていた私は、大企業の新規事業がうまくいかない理由を、全く知らなかったので、それまでの経験を活用したり、周りのアドバイスを聞きながら、新規事業に取り組んでいました。その結果、新規事業がうまくいかず、ほとんど事業化できませんでした。大企業とのプロジェクトを色々と経験し、大企業の新規事業がうまくいかない理由を理解してからは、大企業とのプロジェクトがスムーズに進み、新規事業がうまく進むようになりました。
ということで、このページでは、①大企業の新規事業がうまくいかない理由 と、②その対策 について解説していきます。
この記事を読み終える頃には、大企業の新規事業がうまくいかない理由を理解し、早めに対策を打つことにより、新規事業を成功に導くことができるようになります。
1 大企業の特徴、大企業の業務の進め方
大企業といっても、業界、事業規模、企業文化、経営者の考え方、経営リソース 等が異なるため、多種多様ですし、ひとくくりにすることはできません。しかしながら、大企業ならではの特徴や傾向があります。まずは、大企業の特徴や傾向を理解し、新規事業に取り組む必要があります。
中小企業と比較した大企業の特徴を、以下にまとめました。あくまで一般論なので、すべての大企業に当てはまるわけではありません。表を参考にしながら、自分たちの企業やプロジェクトを組んでいる大企業の状況を、しっかりと把握してください。
| 大企業 | 中小企業 | |
| 資本金 | 3億円を超える(製造業、建設業 等) 5,000万円を超える(サービス業、小売業) | 3億円以下(製造業、建設業 等) 5,000万円以下(サービス業、小売業) |
| 社員数 | 301人以上(製造業、建設業 等) 101人以上(サービス業) 51人以上(小売業) | 300人以下(製造業、建設業 等) 100人以下(サービス業) 50人以下(小売業) |
| 経営リソース | ヒト、モノ、資金、情報が豊富 | ヒト、モノ、資金、情報が限られる |
| リスク許容度 | 失敗の影響は少ない | 失敗が大きな影響をおよぼす |
| 意思決定のスピード | 複数の承認を得るため時間が必要 | すばやい意思決定が可能 |
| 社内調整 | 関係部署との社内調整が必要 | 社内調整は少ない |
| 組織の柔軟性 | 硬直的で新しい挑戦を受け入れにくい | 柔軟で新しい挑戦を受け入れやすい |
| ブランド力 | ブランド力があり市場での信頼がある | ブランド力が弱い |
また、日本の大企業の業務の進め方には、特徴があるので、それらを十分に理解する必要もあります。大企業の業務の進め方についても簡単に列挙しました。特に重要なポイントとして
- 意思決定のプロセスが複雑
- 無駄な会議が多い
- 説明のために多くの資料が必要
- リスク回避の傾向が強い
- 既存事業を優先しがち
などがあります。そのため、大企業で新規事業を立ち上げるには、なかなか大変 です。
2 大企業の新規事業がうまくいかない理由
大企業の新規事業がうまくいかないのは、数々の理由があります。その中でも、特に重要な理由は、以下の5点です。参考にしながら、新規事業の立ち上げを進めてください。
- 既存事業との対立
- 煩雑な社内手続き
- 人材不足
- チャレンジしない企業文化
- 短期的な成果の要求
既存事業との対立
大企業では、既存事業が多くの利益を生み出しており、かつ社員のほとんどが既存事業に従事しています。そのため、すべてにおいて既存事業が優先され、既存事業を中心に事業が進めらています。新規事業の立ち上げが進み、既存事業の経営リソース(ヒト、モノ、資金、情報 など)を活用したり、既存事業と競合する場面が増えたり、社内での評価が高まってくると、既存事業からの抵抗や対立 が生まれます。具体的には、①協力を拒否する ②邪魔をする ③間違った情報を流す などです。
同じ企業に所属していれば、新規事業と既存事業はライバル関係にあるのではなく、協力関係を構築するべきです。ライバルは、社外にたくさんいます。しかしながら、ほとんどの大企業で、新規事業と既存事業は対立し、良好な関係を構築できていません。この対立を緩和することは、非常に重要です。
煩雑な社内手続き
新規事業の立ち上げには、素早い意思決定が非常に重要ですが、大企業では社内の承認手続きが複雑で、作成する資料も多くなりがちです。それにより、新規事業の迅速な展開が妨げられ、メンバーのモチベーションも下がってしまいます。既存事業の手続きが、そのまま活用されるため、新規事業にとって無駄なことが、当たり前のように繰り返されています。
また、新規事業では、ターゲット顧客のこと(ニーズ、動向 など)を分析し深く考えるのが最重要ですが、社内手続きが煩雑だと、承認者や上司の顔色をうかがいながら業務を進めることになる ので、成功はますます遠のいてしまいます。
人材不足
新規事業の立ち上げには、①チャレンジ精神 ②ねばり強さ ③柔軟な発想 が強く求められます。しかしながら、大企業の社員は、ほとんどが安定志向で挑戦を避ける傾向があります。そもそも、安定して長く働きたいから、大企業を選んでいますので、それは当然と言えます。つまり、新規事業に必要な人材と大企業にいる社員の間には、ミスマッチが生じている のです。
さらに、新規事業の担当者は、ほとんどの場合、社内の既存事業を担当していたメンバーから選ばれます。既存事業の運営を行っているメンバーは、安定した運営と業務の効率化が求められています。つまり、業務をいかに効率的に行い、失敗を起こさず確実に業務を遂行し、業務をどうやって仕組化・ルール化するか に注力し、毎日業務をおこなっているのです。そのため、新規事業を立ち上げる担当になった場合、新規事業を進めるのに必要な経験やノウハウが不足してしまいます。
つまり、大企業であっても、新規事業の立ち上げに必要な人材がいない ということです。
チャレンジしない企業文化
企業文化も大企業の新規事業の成功に、大きく関係しています。大企業では、リスクを避けこれまで通り業務を進めることを評価する傾向があります。新しいことにチャレンジしたり、これまでにない発想をすることは、それほど評価されません。失敗を許容しない風土や、保守的な価値観が根付いていると、誰も新規事業にチャレンジしようと思わなくなります。そのような中で、新規事業に取り組んでも、うまくいく訳がありません。
短期的な成果の要求
新規事業の企画・検討を開始し、新規事業をスタートするのに約1年かかります。さらに、業務を見直しながら、事業を軌道にのせるのに、2~4年かかります。つまり、新規事業の成功失敗を評価するには4~5年かかる のです。
このように、新規事業には中長期的な視点が必要です。しかしながら、大企業では、経営陣や株主から短期的な成果を求められることがあります。そのため、新規事業が立ち上がる前に、予算を削られたり、途中で打ち切られてしまいます。
短期的な成果に固執する企業は、経営リソースや時間の無駄になりますので、新規事業を始めない方が良いでしょう。
3 大企業で新規事業を成功させるポイント
大企業の新規事業がうまくいかない理由は、上記の通りですが、それを踏まえて、どのような対策を打つか? は、非常に重要です。有効な7つの対策を、以下にまとめました。一つでも多くの対策を取り入れてください。そうすれば、大企業であっても、成功の可能性を高めることができます。
- 経営者のサポート体制作り
- 権限移譲の推進
- 専門部署の設置
- コミュニケーションの活性化
- 意識改革の促進
- 新規事業に合わせた評価基準の導入
- 外部パートナーの活用
経営者のサポート体制作り
大企業で新規事業を立ち上げようとしても、計画通りに進まない、多くの問題が発生する、資金が足りない、事業を開始しても利益が出ない など、次から次に多くの困難が発生し、社内からの批判を受け、メンバーは疲弊していきます。これらの困難を乗りこえ、新規事業を成功させるためには、経営者のサポート体制が絶対に必要です。経営者が、新規事業の必要性を明確に示し、社内でも優先事項であると位置づけ、困難を乗りこえるための手助けをする ことが重要です。
経営者の支持やサポートがあれば、既存事業の関係者も新規事業を受け入れやすくなります。その結果、両者の対立は緩和され、協力体制がうまれやすくなります。
また、経営者のサポートを受けると、新規事業のメンバーもあきらめずに、困難に立ち向かうようになります。
権限移譲の推進
新規事業の責任者に、ほとんど権限がないため、社内会議を行い、決裁者に承認を得る手続きをくり返している大企業が、非常に多く見られます。会議を設定し、資料を準備し、質問への回答を考える などの業務を何度も行っていると、新規事業の迅速な展開が妨げられ、さらにメンバーのモチベーションも下がってしまいます。
新規事業の責任者には、意思決定や予算執行の権限を、できるだけ付与してください。どこまで権限を付与するかは、十分な検討が必要です。新規事業の立ち上げを成功させるのに重要なのは、社内会議ではありません。煩雑な社内手続きを減らし、権限移譲をすすめるべきです。
専門部署の設置
新しいビジネスをゼロから生みだす新規事業と、すでにやっているビジネスを拡大する既存事業は、事業に対する考え方や進め方が全く異なります。既存事業では、計画通りに進んでいるかを確認し修正しながら業務を進めていきますが、新規事業では計画通りに進んでいるかよりも、現在取り組んでいる課題をどう解決するか?に注力し試行錯誤をくり返します。
おすすめは、新規事業の立ち上げを担当する専門部署を設置すること です。短期的な収益目標から切り離し、中長期的な目標を立て、運営してください。また、新しい部署は既存事業と別フロアにする か、別のオフィスにし、物理的に切り離すべきです。そうすることで、既存事業とのあつれきは減り、自分たちで新規事業を成功させるんだ!というモチベーションが高まります。
コミュニケーションの活性化
新規事業を立ち上げる過程では、①経営者 ②他部署(開発部門、財務部門、マーケティング部門、人事部門 他) ③社外の協力会社 などの関係者に現状や今後の方向性を説明し、承認や理解を得たうえで、業務を進める必要があります。
特に、経営者と他部署のメンバーに注意が必要です。コミュニケーションを怠ると、協力してもらえなくなったり、足を引っ張られたりすることがあります。目先の業務が忙しい場合でも、必ず時間を確保して他部署メンバーとの密なコミュニケーションをとる ことが、成功への第一歩となります。
意識改革の促進
大企業では、これまでの長い活動を通して培われた企業文化があります。その企業文化が、新規事業を立ち上げる時に、足かせになっていることがあります。現状を維持するだけでは、企業は衰退していくばかりです。発展させるためには、常にビジネスチャンスを見つけ、チャレンジしていく必要があります。
まずは、経営者が自らチャレンジを奨励する姿勢を示すこと です。新しい取り組みを進めた社員やチームを表彰したり、新しいプロジェクトを立ち上げることにより、新規事業に対してポジティブなメッセージを発信してください。これらをくり返すことにより、社員の意識改革が進みます。
また、短期的な成果ばかりを重視する企業文化も変える必要があります。なぜなら、新規事業を評価するには、長い時間が必要だからです。
新規事業に合わせた評価基準の導入
新規事業と既存事業は、事業に対する考え方や進め方が全く異なりますので、新規事業に合わせた評価基準を導入するべきです。例として、以下のような評価基準が考えられます。
- プロトタイプの検証・修正は何をやったのか? その結果、どのような製品・サービスを作り上げたか?
- マーケティング戦略を実行・見直しを行い、どのようなノウハウを蓄積したか?
- どのようなチームマネジメントを行ったか? メンバーのモチベーションを向上させたか?
評価基準によってメンバーの行動は変わります。新規事業を担当するメンバーの評価基準は、真剣に考えてください。従来と同じ評価基準だと、新規事業が成功することはないでしょう。
また、新規事業がうまくいかなかったとしても、プロジェクトメンバーの評価がマイナスになったり、キャリアがダウンしないような工夫も必要です。
外部専門家の活用
外部専門家の活用は、的確なアドバイスやサポートを受けられるため、素早く新規事業を進められますし、困難を乗りこえやすくなります。これまで新規事業の立ち上げに、取り組んでこなかった会社や、ビジネスチャンスを逃したくない場合には、非常に有効な対策です。外部専門家に何を求めるのか?事前に十分な検討を行ってから、活用してください。
4 大企業でも成功しやすい新規事業とは
大企業には、経営リソース(ヒト、モノ、資金、情報 など)が豊富にありますが、既存事業との対立、煩雑な社内手続き、人材不足 など、多くの乗り越えなければならない障害があります。さらに、社員のモチベーションを高く維持するのも非常に大変です。そのような状況におかれた大企業では、少しでも成功確率の高い新規事業を選ぶべき です。
新規事業を検討する時に、以下の視点から考えると、成功の可能性が高まります。大企業の場合は、既存事業と全く異なる新規事業に執着するのではなく、企業の成長を最優先にして、成功しやすい新規事業を選ぶことをおすすめします。
- 既存市場に 新しい製品・サービスを投入できるか?
- 新規市場に 今までの製品・サービスを投入できるか?
- 経営リソースを活用できるか?
既存市場に 新しい製品・サービスを投入できるか?
アンゾフの成長マトリクスでは、新製品開発 戦略 と呼ばれています。
今までの市場(既存市場)に、新しい製品・サービス(新規製品)を投入しますので、新しい製品・サービスを作りあげる大変さはあります。しかしながら、すでに市場やターゲットに関する情報をもち、事業を進めるオペレーション体制が活かせるのが、最大のメリットです。つまり、すでに存在する顧客基盤を活かしながら、新しいニーズに合わせて、新しい製品・サービスを開発し、投入するのです。
新規市場に 今までの製品・サービスを投入できるか?
アンゾフの成長マトリクスでは、新市場開拓 戦略 と呼ばれています。
新しい市場(新規市場)に、今までの製品・サービス(既存製品)を投入しますので、市場を分析し新しい顧客を開拓する必要があります。そのため、新製品開発 戦略 に比べて、難易度はあがります。
経営リソースを活用できるか?
大企業は、中小企業と比べて、経営リソース(ヒト、モノ、資金、情報 など)の面で有利です。そのため、自社のもつ経営リソースを活用できる新規事業を始めるべき です。以下の経営リソースを、確認してください。他社と比べて、有利な点が見えてくるはずです。
- 人材や能力
- 保有する設備や装置
- 使える資金
- 持っている情報(顧客、市場、競合、ノウハウ など)
- 知的財産(特許権、ブランド など)
5 まとめ
今回の記事では、大企業の新規事業がうまくいかない理由と、その対策について解説しました。大企業の特徴や業務の進め方を知り、大企業の新規事業がうまくいかない理由を理解すれば、事前に対策を打つことができます。それにより、新規事業の成功の可能性が高まります。大企業でも、新規事業を成功させることは、可能です。ぜひ勇気をもって、新規事業にチャレンジしてください。
大企業の新規事業がうまくいかない理由
- 既存事業との対立
- 煩雑な社内手続き
- 人材不足
- チャレンジしない企業文化
- 短期的な成果の要求